大学を卒業し教員として採用され、田舎の全校6学級の中学校に赴任した私ですが、国語科と社会科を教えることになりました。

初めての生徒の前で、どのような授業をすればいいのか、戸惑いながらも、培った知識をフル活用して、毎日、指導案づくりに励みました。

当初、知識の切り売りばかりで、あれもこれも教えるといった盛りだくさんの授業を、展開していました。

学校の教員組織は、皆さんベテランばかりなので、当初は教室の後ろで、ベテランの先生に授業を見てもらっていました。

「もう少し、何を教えたいかをはっきりさせ、生徒に分かり易い授業をするように」と、指導もしていただきました。

大学出たての教員が、即、教えなくてはいけないのが教育現場ですが、先輩方に手ほどきしてもらえたことは、いい教員生活のスタートになったと思います。

一方、中学2年生の担任にもなり、先生と生徒という関係を、どのように保っていけばいいのかに、苦労しました。

今までの人間関係といえば、友だちとの関係が主となっていたので、先生と生徒との関係をどう構築していけばいいのか、手探り状態でした。

生徒は人懐っこく、何でも話をしてくれました。また、班日記にも、たくさんのことを書いてきてくれました。

ある時、女子生徒が、「先生は、えこひいきをしている。」と班日記に書いてきました。早速、学級活動の時間に自分の思いを伝えました。

「私は、皆の担任だから、ひとりひとりが大切な生徒だと思っている。どこでえこひいきと感じているのか教えてほしい。」

皆の前ではなかなか言いづらかったようなので、紙に書いて出してもらうようにしました。

書いてきた内容は、「授業中、私も手を挙げているのに、当ててもらえなかった。ある人は何回も当ててもらっていた。」という紙が数枚ありました。

早速、皆に、「申し訳なかった。先生は意識していたわけではないが、大きな声で勢いよく手を挙げる子に当てていたかもしれない。今後は回数も数えながら、できるだけ満遍なく当てたい。」と伝えました。

終わってから、男子生徒の数人が「先生、女子は先生の取りあいをしている。気にしなくてもいいよ。」と慰めてくれました。

教師になって、最初のつまずきでした。

生徒は、担任の先生を一番の味方、理解者と思っています。そして、自分の考えや思いを受け止めてくれる人だと思っているのです。

先生は、その思いを裏切ることなく、総ての生徒の声に真剣に耳を傾け寄り添うことが、生徒と向き合うことの第一歩なのです。

そして、生徒に正直であることが、教師への信頼につながるのです。