最初に担任した生徒たちは中学2年生でした。
その年度が終わりに近づいた春休みのことです。
午前中の部活動を終えると、教頭先生が、私を呼び止め、別室に案内しました。
教頭先生は、「山口先生は、今受け持っている2年生を持ちあがりたいだろね。」と言われました。
私は、「生徒たちとの関係も良いので、是非持ち上がりたいと思っています。」と答えました。
「そうやろな。新採なりに生徒の中に入り、良くやってくれていると思っている。でも、結論から言わせてもらうと、1年生の担任になってもらえないだろうか。」
更に、「今の2年生は、他の学年のように2組もない。生徒の進路を進めていくのにも、他方の担任と相談することも出来ず、高校入試や就職探しも1人でやらなくてはいけない。先生は、教師になってからまだ1年目なので、進路指導の経験もなく、やって行くにも大変なことになる。教師経験の豊富な先生に担任をしてもらう方が、生徒や親も安心する。」と言われました。
私も持ちたい反面、彼らの先々の進路となると大変だろうとは思っていました。
「自分の気持ちだけで、彼らの担任を持つよりも、彼らの将来の事を考えて、経験豊富な先生に託した方が、幸せだろう。」と判断して、教頭先生の意向を受け入れることにしました。
1年間やってきた生徒と離れなければならない心境は、寂しい限りでした。
最初に教えた生徒たちだっただけに、余計に感じたのかもしれません。
自分の未熟さから、彼らの力になってやれないと思う喪失感もありました。
新学期になり、担任発表の後、受け持っていた生徒たちが、「何で先生が担任してくれなかったの」等と言ってきてくれましたが、彼らの将来の事を思うと、「それでいい」と自分に言い聞かせました。
そして、片隅から彼らを見守ることも出来るのだと思い返しました。
生徒と先生の関係は、お互いに気持ちを汲み取りながら学校生活をしてきたなかでも、こういったこともあるのだと、初めて感じました。