新採当時担任した生徒は、全体的には田舎の子どもらしく素朴で心の優しい性格でした。
中学2年生の頃の生徒は、女子生徒の方が心身の発育が早いようで、しっかり者の女子生徒と、初心な男子生徒というような対照的な存在でした。
女子生徒は勝気な面もあり、男子生徒をたしなめながらも、学級を上手く引っ張っていました。
雰囲気的には、大きな男女間の対立もなく、仲良くしていました。
その明るい雰囲気を作り出していた要因に、ある男子生徒の存在がありました。
彼は、男女間で意見の対立などが起こると、笑いながらも中に入って、「そんなこと言わんといて」と言って優しくなだめたり、「ここで怒ったらブー」とか、みんなを和らぐ気持ちにさせていました。
時には、吉本新喜劇で観たようなツッコミ演技もしていました。
そんな彼と話していた時に、「僕は、そんなに勉強もできない。でも、みんなを笑わせるのが得意だから、僕にできることは、みんなが喧嘩せず、仲良くなってもらえればいい。」と言っていました。
今の学校生活では、人前でおどけたりふざけたりする子どもがいたりすると、いじめの被害者ではないかと疑うところもあります。
でも、当時の同級生たちは、「彼は、明るい」「彼がいれば、なごむ」と言い、一人の個性を持った人間として認めていたようです。
一人一人を認め合う学級が、そこにはありました。
あれから40数年経ちますが、彼の言動を思い出すたびに、最近、社会や学校が、ギクシャクしてきているような気がします。